3DCGに必要な光の単位についての知識まとめ

3DCGに必要な光の単位についての知識をまとめました。

放射束

さて、まず下図のように光源から出る光を考えます。
光源からはいろんな方向に光が出ています。

f:id:halya_11:20190813225825p:plain

ここで放射束とは、このような光のエネルギーの総和のことです。
よってエネルギー量が何かしらの器具で計測できれば、放射束が求められそうです。

ただし、計測する時間を決めないと定量的に測定できる値にはなりません。
そこで単位時間当たりのエネルギー量として定義したものが放射束です。

以上のことから、光源のエネルギーを { Q }としたとき、放射束 { Φ }は次のように表せます。

 { \displaystyle
Φ=\frac{dQ}{dt}
}

なお、エネルギー量の単位はジュール( { J })で表します。
というわけで放射束の単位はジュール毎秒( { J/s })で、これはつまりワット( { W })です。

放射強度

光源から出る光は、光源によってはある方向に対して特に明るかったりします。

f:id:halya_11:20190813232301p:plain

このような場合、当然ですが光が当たっている部分は明るくなるけど当たっていない部分は暗くなります。

f:id:halya_11:20190813232343p:plain

つまり計測する方向が違えば計測できるエネルギー量も異なります。
というわけで、光の単位にも「方向」の概念を取り入れる必要が出てきます。

このために単位立体角当たり・単位時間当たりのエネルギー量として定義されたのが放射強度です。
すなわち放射強度とは、単位立体角当たりの放射束となります。

したがって測定する方向を {  \overrightarrow{ω} }として表したとき、放射強度 { I }は以下のように表されます。

 { \displaystyle
I=\frac{dΦ}{d\overrightarrow{ω}}
}

またこの定義から放射強度の単位はワット毎ステラジアン( { W/sr })となります。
計測する方向が違えば計測結果も異なるので、放射強度は方向の関数となります。

 { \displaystyle
I( \overrightarrow{ω} )=\frac{dΦ}{d\overrightarrow{ω}}
}

ちなみに立体角については以下の記事にまとめていますので必要に応じて参照してください。

light11.hatenadiary.com

放射照度

次に光が当たる面について考えます。
この面に光が当たっているということは、つまり光のエネルギーが降り注いでいるということです。

f:id:halya_11:20190813233617p:plain

放射照度とは「ある面にどれだけ光のエネルギーが降り注いでいるか」を示す値です。

ある面に降り注ぐエネルギー量が測定できる器具があれば放射照度は求められそうです。
ただし面の大きさを決めないと定量的に測定できる値にはなりません。

そこで、単位面積あたり・単位時間あたりのエネルギー量として定義されたものが放射照度です。
言い換えると放射照度は単位面積当たりの放射束であるといえます。

以上のことから面積 { S }に対する放射照度 { E }は以下のように表されます。

 { \displaystyle
E=\frac{dΦ}{dS}
}

またこの定義から放射照度の単位はワット毎平方メートル( { W / m^{2} } )です。

放射照度は、当然ながら計測する地点が光源から遠いほど値が小さくなります。
したがって放射照度は位置の関数であるといえます。

 { \displaystyle
E( \overrightarrow{x} ) =\frac{dΦ}{dS}
}

放射輝度

次に、前節と同様に光が当たる面について考えます。
この面にはある方向からは強い光が当たり、他方からは光があまり当たりません。

f:id:halya_11:20190813234400p:plain

前節の放射照度を使えばこの面に当たるエネルギーの総量を表すことはできますが、
じゃあどの方向から強い光が当たってるのか、といった情報は表現できません。

そこで「ある面にある方向からどれだけ光のエネルギーが降り注いでいるか」を表す放射輝度が定義されます。
つまり放射輝度は単位投影面積あたり・単位立体角あたり・単位時間あたりのエネルギー量として定義されます。
言い換えると放射輝度は投影面積面積あたり、単位立体角あたりの放射束です。
なお投影面積とは、光の入射角に垂直な面の面積のことです。

f:id:halya_11:20190814201233p:plain

単位面積を単位投影面積に変換するためには、下図のようにcosθを掛ける必要があります。

f:id:halya_11:20190814201329p:plain

以上のことから面積 { S }、方向 {  \overrightarrow{ω} }に対する放射輝度 { L }は以下のように表されます。

 { \displaystyle
L =\frac{d^{2}Φ}{dScosθ d\overrightarrow{ω}}
}

この定義から放射輝度の単位はワット毎ステラジアン毎平方メートル( { W / sr・m^{2} } )です。

放射輝度は放射照度と同様、計測する地点が光源から遠いほど値が小さくなります。
また、計測する角度が違えば計測結果の値も異なってきます。
したがって放射輝度は位置と方向の関数であるといえます。

 { \displaystyle
L( \overrightarrow{x}, \overrightarrow{ω} ) =\frac{d^{2}Φ}{dScosθ d\overrightarrow{ω}}
}

放射量と測光量

さて光を測定する際には放射量と測光量という二つの考え方があります。
まず放射量とは、光が持つ実際のエネルギー量のことです。
前節までで見てきたものはすべて放射量を表すための単位です。

さて人間の目はこのエネルギーによる刺激を受けて色を認識します。
しかし人間は、同じ放射量であっても「青」よりも「緑」のほうが明るく見えてしまいます。
つまり同じエネルギー量(放射量)であっても、人間が知覚する明るさは異なってしまいます。

人間の目の観点からすれば、同じ明るさは同じ量として取り扱いたいところです。
そのため、人間の目に見える明るさをベースとして放射量を調整したものが測光量です。
具体的には、人が明るく感じやすい緑の波長だったらちょっと値を小さめにしたりとか、そういう感じで調整されています。

光の計算を扱う際にはこの放射量と測光量は明確に区別する必要があります。

放射量と測光量の対応表

さて前節で説明した放射量と測光量は、それぞれ1:1で対応する単位が存在します。
以下はこれらを表としてまとめたものとなります。

放射量 測光量 説明
放射束 光束 単位時間当たりのエネルギー量
放射強度 光度 単位立体角当たり・単位時間当たりのエネルギー量
放射照度 照度 単位面積当たり・単位時間当たりのエネルギー量
放射輝度 輝度 単位射影面積あたり・単位立体角あたり・単位時間あたりのエネルギー量

測光量についてはこの節ではじめて触れるので、もう少しだけ説明します。
まず光束はルーメン( { lm } )を単位とする値であり、プロジェクターの明るさの単位などに使われます。
光度の単位はカンデラ( { cd } )です。
照度の単位はルクス( { lx } ) = ルーメン毎平方メートル( { lm / m^{2} } )です。
輝度の単位はカンデラ毎平方メートル( { cd / m^{2} } )であり、ニト( { nit } )とも呼ばれます。

参考

mathwords.net

qiita.com

qiita.com