【Unity】大量のメッシュを軽く描画!GPUインスタンシングの基礎知識とシェーダの書き方まとめ

UnityでGPUインスタンシングを使う上での基礎知識とシェーダの書き方をまとめました。

Unity2019.2.6

GPUインスタンシングとは

GPUインスタンシングとは、要は「同じメッシュを一回のドローコールでいっぱい描画できる」機能です。
木や草や岩など、大量に同じメッシュを配置するようなケースで効果を発揮します。

また、GPUの機能を使うので、Static Bachingのように事前にメッシュを結合したデータを持つ必要がありません。
ただしシェーダはこの機能に対応した書き方をしたものを使う必要があります。

Standard Shaderで位置やスケールの異なるモデルを一気に描画する

さてそれではまずStandard Shaderを使って簡単にGPUインスタンシングの効果を体験してみます。
適当に位置とスケールの異なるメッシュを大量に配置しておきます。
今回は下図のようにCubeとSphereの二種類のメッシュを大量に配置しました。

f:id:halya_11:20190922225505p:plain

次にこれらにStandardシェーダを設定したMaterialをアサインします。
この時点でStatisticsを見ると、Batchesは780となっており大量のドローコールが発生していることがわかります。

f:id:halya_11:20190922225634p:plain

そこでGPUインスタンシングを使ってドローコールを減らします。
GPUインスタンシングを有効にするには、先ほどのMaterialのInspector下部から
Enable GPU Instancingにチェックを入れるだけです。

f:id:halya_11:20190922230010p:plain

再度Statisticsを見ると、Saved by batchingが763となりBachesが17まで減っていることがわかります。

f:id:halya_11:20190922230042p:plain

Frame Debuggerを見てもメッシュの描画自体はたった4回のドローコールで行われていました。

f:id:halya_11:20190922230317p:plain

GPUインスタンシングに対応したシェーダを書く

前節のようにUnityの組み込みシェーダを使うと簡単にGPUインスタンシングできます。
しかし位置やスケール以外のプロパティをGPUインスタンシングに対応させたり、
自分で作ったシェーダでGPUインスタンシングをする場合には対応したシェーダを書く必要があります。

といってもUnityが決めた書き方に従うだけなので難しいことはありません。
まずは位置とスケールをメッシュごとに変えられるシンプルなGPUインスタンシングに対応したシェーダを書いてみます。

Shader "Example"
{
    Properties
    {
        _Color("Color", Color) = (1, 1, 1, 1)
    }
    SubShader
    {
        Pass
        {
            CGPROGRAM
            #pragma vertex vert
            #pragma fragment frag
            // インスタンシング用のpragma
            #pragma multi_compile_instancing
            #include "UnityCG.cginc"

            struct appdata
            {
                float4 vertex : POSITION;
                // インスタンスIDを頂点情報として受け取る
                UNITY_VERTEX_INPUT_INSTANCE_ID
            };

            struct v2f
            {
                float4 vertex : SV_POSITION;
            };

            half4 _Color;

            v2f vert(appdata v)
            {
                v2f o;

                // インスタンスIDを元に位置やスケールを反映
                UNITY_SETUP_INSTANCE_ID(v);

                o.vertex = UnityObjectToClipPos(v.vertex);
                return o;
            }

            fixed4 frag(v2f i) : SV_Target
            {
                return _Color;
            }
            ENDCG
        }
    }
}

わかりやすくするため、ライティングなしの単色を返すシェーダにしました。
GPUインスタンシング用の処理はコメントを書いて部分のみです。

これを適用してEnable GPU Instancingにチェックを入れるとGPUインスタンシングが効いていることが確認できます。

f:id:halya_11:20190922234146p:plain

位置やスケール以外のプロパティが異なるモデルを一気に描画する

色など、位置やスケール以外のプロパティが異なるモデルをGPUインスタンシングで描画したい場合にはもうひと手間必要です。
ここでは色が異なるモデルを描画するためのシェーダを書いてみます。

Shader "Example"
{
    Properties
    {
        _Color("Color", Color) = (1, 1, 1, 1)
    }
    SubShader
    {
        Pass
        {
            CGPROGRAM
            #pragma vertex vert
            #pragma fragment frag
            #pragma multi_compile_instancing
            #include "UnityCG.cginc"

            struct appdata
            {
                float4 vertex : POSITION;
                UNITY_VERTEX_INPUT_INSTANCE_ID
            };

            struct v2f
            {
                float4 vertex : SV_POSITION;
                // フラグメントシェーダにインスタンスIDを受け渡す
                UNITY_VERTEX_INPUT_INSTANCE_ID
            };

            UNITY_INSTANCING_BUFFER_START(Props)
                // メッシュごとに変えるプロパティはここに定義する
                UNITY_DEFINE_INSTANCED_PROP(float4, _Color)
            UNITY_INSTANCING_BUFFER_END(Props)

            v2f vert(appdata v)
            {
                v2f o;

                UNITY_SETUP_INSTANCE_ID(v);
                // フラグメントシェーダにプロパティを受け渡す
                UNITY_TRANSFER_INSTANCE_ID(v, o);

                o.vertex = UnityObjectToClipPos(v.vertex);
                return o;
            }

            fixed4 frag(v2f i) : SV_Target
            {
                // インスタンスIDに応じた色を取得する
                UNITY_SETUP_INSTANCE_ID(i);
                return UNITY_ACCESS_INSTANCED_PROP(Props, _Color);
            }
            ENDCG
        }
    }
}

_ColorというプロパティをGPUインスタンシングに対応させています。
細かい説明はコメントに書いた通りです。

このようにして定義したプロパティの値は、下記のようにMaterialPropertyBlockを通じて設定します。

using UnityEngine;

public class Example : MonoBehaviour
{
    private void Start()
    {
        var materialPropertyBlock = new MaterialPropertyBlock();
        foreach (var renderer in GetComponentsInChildren<MeshRenderer>()) {

            renderer.GetPropertyBlock(materialPropertyBlock);

            // MaterialPropertyBlockを使って色を指定
            materialPropertyBlock.SetColor("_Color", Random.ColorHSV());

            renderer.SetPropertyBlock(materialPropertyBlock);
        }
    }
}

これにより色違いのメッシュをGPUインスタンシングによって効率的に描画できるようになりました。

f:id:halya_11:20190923003637p:plain

もちろんPBRのシェーダに対応させれば下図のようにライティングすることも可能です。

f:id:halya_11:20190923005117p:plain

ちなみにMaterialPropertyBlockの詳細については以下の記事にまとめていますので、必要に応じて参照してください。

light11.hatenadiary.com

GPUが対応している必要がある

GPUインスタンシングはGPUの機能を使うため、GPUが対応していないと使えません。
モバイルだとMetal, Vulkanの他、Open GLES3.0以上が対応しているようです。

また、SystemInfo.supportsInstancingでサポート状況をチェックできます。

docs.unity3d.com

関連

light11.hatenadiary.com

light11.hatenadiary.com

参考

docs.unity3d.com