被写界深度のポストエフェクトを実装する際の前提知識として、レンズとボケの仕組みについてまとめます。
はじめに
望遠レンズで写真を撮った時など、被写界深度が浅い写真は幻想的なボケかたをします。
Scrooge and the Ghost of Christmas Past | Scrooge is reminde… | Flickr
3DCGにおいてDepth Of Field(被写界深度)と呼ばれるポストエフェクトはこの物理現象を再現するものです。
この記事ではDepth Of Fieldのポストエフェクトを実装するための前提知識として、
被写界深度が浅い写真がなぜこのようにボケるのかをカメラの仕組みを通して理解します。
シンプルなカメラ - ピンホールカメラ
まず、ピンホールカメラについて考えます。
ピンホールカメラとは、箱に小さな穴(ピンホール)を開けただけの単純な構造のカメラです。
このピンホールから入ってきた光が像面に当たることで、被写体が結像します。
被写体が結像するまでの光の軌跡を示すと下図のようになります。
ピンホールカメラを使うとボケのないはっきりとした像が得られますが、
ピンホールがとても小さいので入射する光の量がわずかしかありません。
そのため明るい像を得るには長い時間露光しておく必要があります。
たくさんの光を取り込むためにレンズを使う
ピンホールカメラのように長い露光時間を必要とするカメラでは撮影している間被写体が静止している必要があります。
つまり動く物体を撮影することができず、実用的とはいえません。
そこでより効率よく光を集めるための仕組みとして、カメラのレンズが登場します。
レンズを使うと下図の通り、より多くの光を一度に取り込んで、かつそれらを同じ位置に結像させられます。
一度に取り込める光の量が多いため短い露光時間でも十分に明るい像が得られ、動いている物体も撮影できます。
レンズの副作用 - 錯乱円
前節のようにレンズを使うと多くの光を短い時間で取り込めます。
しかし、焦点距離からずれた被写体は、下図のように焦点が合っていない状態で結像します。
結果的にぼやっと丸くブレた像が結像します。
これを錯乱円と言います。
実際には円ではなく絞りの形で形状が決まるので、六角形にブレたりします。
被写界深度
さて被写界深度が浅い写真とは、つまり焦点距離からずれた部分が多い写真ということになります。
これにより大きな錯乱円が発生し、さらに明るい部分が特に目立ってボケて見えるので、
結果として下図のような良い感じにボケた写真が出来上がるわけです。
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